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好きなギタリスト②Peter Bernsteinについて

先月に続き、私が好きなギタリストについて書いて行こうと思います。

今回は、現代のジャズシーンの中心人物の一人であるPeter Bernsteinについて。1960年代後半に生まれたピーターは、Kurt Rosenwinkel、Jesse Van Rullerなどと同世代のギタリストです。

彼はジムホールの弟子であった事で知られていますが、同時にグラントグリーンやセロニアスモンクからも大きく影響も受けており、まさにジャズの「正統」と呼ぶにふさわしいギタリストと言えるでしょう。

ピーターの演奏スタイルは、派手さこそないものの非常に個性的です。

リズムには伝統的なジャズやブルースに根ざした、高度に発展したアプローチが見られます。また、ソロのラインではオーギュメントや特殊なペンタトニックスケールなどが多用されており、非常に現代的な音使いです。

伝統的なジャズに則った現代的な演奏スタイル、という点においてはカートと同様ですが、ピーターのスタイルはよりオーソドックスで保守的、純粋にジャズ的であると言えるでしょう。

それゆえに、一聴すると地味に聴こえることが多いのですが、実際は演奏の随所にとても斬新なアプローチが潜んでいます。

ピーターの演奏スタイルを語る上で、絶対に欠かせないのが”ザイドラー”のギターです。

2002年に40代の若さで他界したルシアーJohn Zeidlerが製作したアーチトップギターは、その音の立ち上がりの早さやアコースティックな豊かな響きに大きな特徴があります。

ピーターが使用しているギターは、1981年に製作された初期の一本であり、ザイドラーの中でも非常に珍しい仕様になっています。

ジャズに対して硬派で一途な姿勢を感じさせるピーターは、GibsonのES-175やL-5を使用していた頃からほとんどスタイルを変えていません。そして、2000年頃にザイドラーと出会ったことで、自身のプレイスタイルにさらに磨きをかけていきます。

ザイドラーを持つことで完成されたピーターのサウンドが一番よく表れているのがバッキングです。

現代のジャズギタリストとしては珍しい、ほぼピッキングのみで演奏するスタイルと、ザイドラーの響きの豊かさが合わさる事により、一聴すれば彼の演奏と分かるような、ジャズ的な丸い音とは異質のジャリっとした独特のトーンが生まれます。

芯の部分で一貫性を保ちながらも様々なギターを持ち替えていくカートとは対照的に、ピーターは5作目の”HEART’S CONTENT”以来、ずっとザイドラーを使い続けています。

デビュー以来ずっと、一つのスタイルを貫いて来たピーターの演奏には、少ない音数でもアンサンブルの中で独特の存在感があります。

その音使いの巧みさはもちろん、極めて洗練されたジャズ特有の「訛り」を含んだリズムアプローチは、一聴すると簡単に口ずさめそうなほどシンプルに聴こえるのに、よく聴いてみると、どのようなリズムで演奏されているのか理解が難しいほどの有機的な複雑さを持っています。

私自身、ピーターの好きなテイクを耳コピしよう思って、一小節に何時間かけてもどう記譜すれば良いのか正解が分からず、リズムアプローチの複雑さを体感したことがあります。

カートやジェシのように分かりやすく斬新なアプローチに比べて、高い技術と音楽性により、強烈な個性をあえて隠すようなアプローチをするピーター。その職人気質な実直さが彼の魅力ではないでしょうか。

特にミュージシャン、ギタリストからの評価が高く、カートと同じく後進のギタリストたちへ大きな影響を与えている存在の一人です。

たとえばLage Lundや高免信喜さんなどのスタイルにもピーターの影響が感じられます。

私は、彼の来日ライブがあればなるべく足を運ぶようにしています。
コロナ禍で海外のジャズミュージシャンが来日公演を行うのは未だに難しく、生で演奏を聴くことは叶わないのが現状ですが、いつかまた彼の洗練されたサウンドをライブで体感するのを楽しみにしています。

あるライブへ行った時、アクシデントで演奏中に会場の電源が落ちた事がありました。
アンプの音が消えた中から、ピーターの演奏するザイドラーの生音が聴こえてきて、その豊かな鳴りに感動したのを覚えています。
彼の音の説得力を感じる非常に印象的な出来事でした。

彼の作品は数多くありますが、私はカートと同じく「スタンダード曲のソロギター」をおすすめしたいです。ソロギターというシンプルな形式の中で、圧倒的なサウンドそのものと完成されたリズム、そして現代的なボイシングやアプローチを、よりはっきりと聴くことができます。

 

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